総会の議決事項および会議の成立要件
- 標準規約では、下表の事項について、総会の決議を経なければならないと定めています。
- 収支決算及び事業報告、収支予算及び事業計画、管理会社との管理委託契約の締結、役員の選任及び解任の他、長期修繕計画の作成又は変更や、特別の管理の実施(大規模修繕等)に充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩しをする場合にも総会の決議が必要となります。
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総会の議決事項 - 収支決算及び事業報告
- 収支予算及び事業計画
- 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
- 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
- 長期修繕計画の作成又は変更
- 特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
- 建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
- 修繕積立金の保管及び運用方法
- 管理組合が一体として行う専有部分の設備の管理の実施
- 区分所有法で定める義務違反行為の停止等の請求及びー定の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
- 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
- 建替え
- 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
- 理事長、副理事長、会計担当理事は理事の互選により選任する。
- 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
- その他管理組合の業務に関する重要事項
- 標準規約では、総会の会議は議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならないとしています。
総会に出席する者、書面または代理人によって議決権を行使する組合員が、議決権の半数に満たない場合、総会の会議は成立しません。
区分所有者(組合員)と議決権
- 区分所有者とは、員数(頭数)を指し、議決権とは共用部分の持分割合であり、専有部分の床面積の割合を指します。
- 下図マンションの例だと、区分所有者=7人、議決権は全体で12となります。
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3階 A
301A
302A
303B
304C
3052階 D
201D
202E
203E
204E
2051階 FG
101HI
102共有部分 1号室 2号室 3号室 4号室 5号室 全室同じ面積(議決権)とする
区分所有者=7人 議決権は全体で12 A 3 B 1 C 1 D 2 E 3 FG 1 HI 1
- 床面積割合が高い区分所有者(組合員)は、多くの議決権割合を有します。
管理費や修繕積立金の負担割合も多くなります。 - FG(二人合わせて1組合員)およびHI(同)は、夫々二人で1議決権を持つことになります。
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総会の議事の決議
- 区分所有法では、通常の議事は「区分所有者及び議決権の各過半数で決する」としていますが、標準規約では「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する」としており、2点について定めが緩和されています。
- 1点目は、「全議決権の過半数ではなく、出席組合員の議決権の過半数で決すること」、
- 2点目は、「区分所有者(組合員)の過半数という要件がないこと」。
- これは、総会欠席者が少なくない現状を踏まえ、普通決議事項は会議一般の原則に従い、出席組合員の議決権の過半数で決しても差し支えないとの考えに基づきます。
- ただし、重要とされる特別決議事項は、区分所有法に定めるとおり、標準規約でも組合員総数及び議決権総数の4分の3以上または5分の4以上で決します。
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総会の議決事項 -
区分所有者および議決権 決議内容 区分所有者および議決権の、各5分の4 以上の賛成が必要 建替え決議 - 規約で別段の定め(定員の増減)はできません。
- 建替えに賛成の区分所有者は、反対の区分所有者に対して、区分所有権の売渡請求をすることができます。
- 売渡請求権は「形成権」(権利者の意思表示のみで法律効果を生じさせられる権利)と解釈されています。
区分所有者および議決権の、各4分の3 以上の賛成が必要 - 共用部分の重大変更
- 規約により区分所有者の定数を過半数まで減らすことができます。
- 議決権の定数を減らすことはできません。
- 規約により区分所有者の定数を過半数まで減らすことができます。
- 規約の設定・変更・廃止
- 規約による別段の定めはできません。
- 規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その者の承諾が必要です。
- 管理組合の法人化
- 規約による別段の定めはできません。
- 専有部分の使用禁止請求
- 規約による別段の定めはできません。
- 決議の時に、義務違反者(所有者)に弁明の機会を与えた上で、裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
- 使用禁止の期間は、裁判所によって相当の期間が定められます。
- 専有部分等の競売請求
- 規約による別段の定めはできません。
- 裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
- 占有者に対する引渡請求
- 規約による別段の定めはできません。
- 決議の時に、義務違反者(占有者)に弁明の機会を与えた上で、裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
- 大規模滅失の復旧決議
- 規約による別段の定めはできません。
- 大規模滅失とは、建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合をいいます。
区分所有者および議決権の、各過半数 の賛成が必要 - 共用部分の軽微な変更
- 規約によって別段の定めができます。
- 行為の停止請求
- 規約によって別段の定めができます。
- 騒音や悪臭などの迷惑行為の停止請求は、区分所有者の1人または数人、もしくは全員、管理組合法人などが自由にすることができますが、訴訟を提起するには過半数の賛成が必要です。
- 小規模滅失の復旧決議
- 規約によって別段の定めができます。
- 小規模滅失とは、建物の価格の2分の1以下の部分が滅失した場合をいいます。
区分所有者および議決権の、各5分の1 以上の賛成が必要 - 集会の召集
- 規約により、区分所有者の定数も議決権の定数も減じることができます。
- 専有部分を借りている者(占有者)は議決権を持たないので決議に参加することはできませんが、集会に出席して意見を述べることはできます。そして、決議の効力は占有者に対しても及びます。
単独で可能 - 共用部分の保存行為
- 規約によって別段の定めができます。
- 小規模滅失の復旧
- 規約によって別段の定めができます。
- 1人で直して、その費用を他の区分所有者に請求することができます。
- 決議により復旧させる場合は過半数の賛成が必要です。
- 区分所有者の共同の利益のために行う行為の停止請求
- 規約による別段の定めはできません。
- 訴訟を提起するには、集会の決議によらなければなりません。
- 総会では、特別決議事項等一定の定めを除き、標準規約とは異なる規約を定めることもできます。夫々のマンションの実状に照らし合わせ、規約を制定、変更または廃止することができます。
- 規約および総会の決議は、そのときの区分所有者だけではなく、将来、売買や相続により専有部分を取得する者に対しても効力を生じます。
- 賃借人等の占有者に対しても、使用方法については効力を生じます。
- 組合員にとって、マンションは自らが属する「自治体」であり、その運営に対して参加する権利がある一方で、費用負担等の義務も発生します。
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